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パソコンボランティア
日本評論社

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「パソボラ」宣言の書

パソコンは、10年で100倍速く、100分の1の大きさになりました。
パソコンやワープロの普及によって文字やデータの電子化がすすみ、障害者にとって新しい可能性が急速に広がっています。

たとえば視覚障害者の場合、パソコンに「音声合成装置」や「点字ディスプレイ」、「スキャナー(画像読込機)」を取り付けると、いままで読めなかったものが音声や点字でわかったり、英語ならば100%スキャナーで読みとれます。
いままでは困難といわれた聴覚障害者と視覚障害者との直接のコミュニケーションもパソコン通信の「チャット」機能で意外と簡単にできたりします。

こうした情報の電子化とネットワークの利用は、情報アクセス権として「現代の基本的人権」といわれるようになりました。

しかし、やっかいなのがパソコンです。
自動車の講習と同じように使いこなすためには講習が必要です。
そこにいま、各地で産声をあげはじめているのが「パソボラ」こと「パソコンボランティア」です。

パソコンの設定が、「接続ができない」「障害でキーボードやマウスが使えない」。
そんな障害者のお宅を訪問して、環境設定の手助けをする。
このサポート活動はネットワーク上で常時技術情報などを交流しているので、エンジニアだけでなく、学生や主婦などちょっとだけパソコンの先輩ならばだれもが参加できます。
経済的動機に支えられていないので、もろいといえばもろいのですが、思いがけないつながりや広がりをみせるのです。

本書はそんな運動としての「パソボラ」宣言であり実践的な参考書です。
日本障害者協議会のよびかけて600名が参加し、成功した同名のカンファレンスをベースに、大幅な加筆や新企画がされています。
「パソボラ」が障害者の世界を変え、社会参加に道を開き、社会のインターフェイスさえ変えようとしていることに、きっとわくわくするでしょう。

(薗部英夫)

全日本ろうあ連盟「日本聴覚障害新聞」97年10月1日号より


書籍パソコンボランティア表紙
編 者  JDプロジェクト  
書 名  パソコンボランティア
出版社  日本評論社     
定 価  1700円+税   
     ISBN4-535-56046-3 

目 次

障害者と情報とネットワークの親密な関係
金子 郁容 (VCOM代表・慶応大学大学院教授)

第1章 ネットワークが開く障害者の夢−−−4つの物語から

重度障害者のメディアとボランティアへの取り組み
金子  寿(FLC)
全盲のコンピュータエンジニア林さんの青春
佐々木 夏実(波大学附属盲学校)
「夢の扉」で結ばれた筋ジスのなかまたち
矢澤 健司(日本筋ジストロフィー協会)
在宅で「働きたい」と願う
堀込 真理子(トーコロ情報処理センター)

第2章 広がるパソコンボランティア

出会いの嬉しさ できる喜び
薗部 英夫(全国障害者問題研究会・日本障害者協議会)
地域でのサポートシステムのための政策提言
伊藤 英一(神奈川県総合リハビリテーションセンター)
解説 障害者とアクセス権をめぐる国際動向
長瀬  修(障害・コミュニケーション研究所)
福祉工作クラブ「パソボラネットワーク」の出来事
ぱそボラって、何なんだろうね。オツペルさんの体験から
蘆田 逸子・関根 千佳・飯塚 慎司(福祉工作クラブ)

第3章 パソコンボランティアの挑戦

シンポジウム「パソコンボランティアの挑戦」
畠山 卓朗(横浜市総合リハビリテーションセンター)
青木 与志夫(NIFY-Serve技術ボランティア)
関根 千佳(People福祉工作クラブ)
コメンテーター:清原 慶子(ルーテル学院大学教授)
コーディネーター:薗部 英夫(日本障害者協議会)
ユニバーサルデザインとシニアネットのこころみ
大島 真理子(老テク研究会)

第4章 ぱそボラをやろう!

実録!パソコンボランティア
梅垣 まさひろ(JDプロジェクト)
パソボラをはじめる人のためのQ&A
協力:島谷 綾子(主婦)・田中 克典(埼玉県立川口工業高等学校)

終章 パソコンボランティアが指し示すもの

「パソコンボランティア」が提起する、共に生きる人間のための情報環境作り
清原 慶子(ルーテル学院大学)

編集をおえて
薗部 英夫(JDプロジェクト)

扉カット・本文イラスト
篠原 克周
扉裏カット・Q&Aイラスト
松村 佳恵

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