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障害者自立支援法訴訟の勝利をめざす会の運動にご参加ください
よびかけ人
内橋 克人(経済評論家)
大谷 藤郎(国立ハンセン病資料館名誉館長)
落合 恵子(作家)
勝又 和夫(日本障害者協議会代表)
香山 リカ(精神科医・立教大学教授)
金子 勝(慶應義塾大学教授)
堤 未果(ジャーナリスト)
仲村 優一(日本社会事業大学名誉教授)
樋口 恵子(評論家・東京家政大学名誉教授)
三澤 了(DPI(障害者インターナショナル)日本会議議長)
私たちは障害者自立支援法訴訟のご支援とご参加を心からよびかけます
●応益負担の矛盾
2006年、障害者福祉に対する財政削減をねらいとし、その根幹としての応益負担の導入を核とする「障害者自立支援法」がスタートしてしまいました。日本障害者協議会(JD)をはじめとする多くの障害者団体は、この法律が国会で審議されている段階から「これまでのサービスが維持できなくなり、障害者の地域生活が困難な状況が生まれてきてしまう」などの立場で、慎重審議を唱えて運動をしてきました。
そして法律が強行成立させられると、私たちが懸念していたことが、まさに現実のものとなってしまいました。
在宅の場合、月額最高で37,200円を負担しなければならなくなりました。年金額はそのままでです。
また福祉工場や授産施設などで働く人たちにも「利用料」が課せられることになってしまいました。受け取る給料よりも利用料の方が高くなってしまう人が多数にのぼり、働く意味まで変えてしまうものです。働く場に通う意味が全く失われてしまったケースも多く出てしまいました。
JDやDPI、ろうあ連盟などが協力して、2006年日比谷で「10.31大フォーラム」を開催しました。全国から約1万5千名の障害者、家族、関係者が集まり、「このままだと本当に生活が立ちいかなくなる」ことを強く訴えました。集会の後国会に向けて、また都内のオフィス街の市民に理解を求め、長時間にわたりデモ行進を行いました。翌年も「10.30大フォーラム」を行うとともに各地でも多くの集会を開催しました。
障害分野史上、最大と言われたこの大きな運動の勢いと流れは、政府や国会を動かし、特別軽減措置(2008年度予算での対策)という結果に結びついていきました。しかし「応益負担」という法律はそのままで、暫定措置という形で行われています。
「自立支援法」施行以前には、障害が重く、一日24時間の介助保障を受けて地域生活を営んでいた人もいました。しかし今は、自治体負担が大きくなる関係から、介助サービスの時間数を減らされてしまったという例も少なくありません(例えば夜中については「巡回サービス」を受けなさいなどとする例)。
「障害者自立支援法」は、その名前とは裏腹で、まさに、障害者の自立を阻害する法律・政策として生き続けています。また、この背景には、市場万能主義の導入による構造改革、「三位一体」改革や、介護保険制度との統合化議論があることも見逃せません。
●立ち上がった障害者たち
「障害者自立支援法」の利用負担額の決定や、サービス支給量の個々の厳しい決定は、障害のある人たちの生活を直撃しています。そうしたなか2008年に入り、さらなる減免措置がとられることになりました。しかし、障害のある人にとって、月額「1500円」は、とても大きな額なのです。その上、自立支援医療や補装具の応益負担、給食費の実費負担もかさんできます。生活保護を受けずに、年金手当を中心に生活を工夫しながら組み立てている人たちにとって、大きな金額なのです。
そして、それ以上に我慢ならないのは、障害者が当たり前に生活することに利用料を課し、障害の重い人ほど負担がかさむといった障害自己責任料を負わせたことです。
「自立支援法」施行以前は、応益負担はなく、応能負担でした。ホームヘルプサービスや、通所などの多くのサービスは、自立支援法によって、自己負担というものを利用者全体に押し広げてしまい、それに伴って一人一人の障害者の生活もより厳しいものにさせられています。
「こんなんじゃ生活できない」と、堪忍袋の緒を切らした全国の仲間たちが、いま、裁判を起こそうと準備を進めています。
憲法は第13条で幸福追求権を、第14条では法の下の平等をのべ、第25条で、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を明記しています。そして第25条2項では、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めています。これによって日本の社会保障の体系が発展してきたといっても、過言ではありません。
また、第89条では、「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」としているのです。にもかかわらず、昨今は構造改革・民間活力の導入という名の下に、民間移譲などによる財政削減を意図した福祉を進めているのです。
「障害者自立支援法」にみられるように、障害者施策や、社会福祉施策の方向は、憲法の理念を大きく踏み外すものとなっています。
「障害者権利条約」が発効しました。その基本はすべての人々の人権の確立であり、障害を理由とする差別の禁止です。この理念は、憲法の第14条「法の下の平等」と基本的には同じもので、憲法の下、国内法の見直しを激しくせまるものです。
10月31日に、全国の仲間たち30余名がそれぞれの裁判所に一斉提訴を行います。
裁判には多くの費用はもちろんのこと、相当な精神的なエネルギーも必要とされます。ひとりひとりの原告の仲間を物心両面から励まし支えていくと同時に、障害者や社会福祉政策を根本から改めさせ、憲法に照らし合わせた施策の下、豊かな生活が実現するように、皆様のご支援とこの運動へのご参加を心から呼びかけます。