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用語辞典 パソコンボランティア

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 パソコンボランティア(略称・パソボラ)は、とりくみのなかでつくられた言葉であり運動の総称だ。

 「インターネットに接続ができない」「障害のためキーボードやマウスが使えない」。そんな障害者のSOSに応えて、講習会の開催やお宅を訪問して、パソコンが使えるように手助けをする。

 このサポート活動は、インターネットやパソコン通信など電子ネットワーク上で情報などを交流しているので、エンジニアだけでなく、学生や主婦、また退職した元会社員や障害者自身などちょっとだけパソコンの先輩ならばだれもが参加できる。経済的動機に支えられていないので、もろいといえばもろいが、逆に思いがけないつながりや広がりをみせることもある。

 パソコンやワープロの普及によって文字やデータの電子化がすすみ、障害者にとって新しい可能性が急速に広がっている。

 たとえば視覚障害者の場合、パソコンに「音声合成装置」や「点字ディスプレイ」、「スキャナー(画像読込機)」を取り付けると、いままで読めなかったものが音声や点字でわかったり、英語だけでなく日本語もかなりの精度でスキャナーで読みとれる。いままでは困難といわれた聴覚障害者と視覚障害者との直接のコミュニケーションも電子ネットワーク上では簡単にできるようになった。在宅での仕事の希望も広がっている。

 こうした情報の電子化とネットワークの利用は、情報アクセス権として「現代の基本的人権」といわれるようになってきた。しかし、パソコンは自動車の講習と同じように使いこなすためには適度な講習が必要だ。買えばすぐに使いこなせるようなものにはなっていない。しかし、一般のパソコン教室は費用が高いだけでなく、交通アクセス含め移動の困難が大きい。障害への理解やサポートも少ない。そうしたなかで独自の講習の場が切実に求められている。

 1997年3月。東京・早稲田大学国際会議場に雨天にもかかわらず、車いす利用者50名含め600名が全国からつどった。「パソコンボランティア・カンファレンス97」である。記念講演やシンポジウム、リレートーク、インターネット講習会や総合相談、機器展示、体験・工作コーナーが設けられ熱気と感動にあふれた(JDプロジェクト編『パソコンボランティア』日本評論社 参照)。98年3月のパラリンピックの際には「文化イベント」として第2回が開催される。

 しかし、当然のことながら「ボランティア」レベルの取り組みではやれないことが多々ある。日本障害者協議会は「福祉事務所の担当者の研修をはじめ、公的なマンパワーの育成、リハビリテーションセンターや福祉用具センターなどを活用した総合的な公的支援システムづくり」などの要請を各省に行っている。

薗部英夫  日本障害者協議会

「AIGO」1997年11月号(日本精神薄弱者愛護協会[現・財団法人日本知的障害者福祉協会])より


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